今国会における「安全保障法制」の議論は、
政治家の言葉の重みについて、改めて考えさせられる場面が多い。
が、ここでは、安倍首相の断定表現「絶対にない」などを取り上げない。
某閣僚の「戦後日本人は、戦争で死んでいない」という言説を取り上げたい。
ここでのタイトルを「戦場で死ぬ」ではなく、「戦争で死ぬ」としたのは、
「帰還兵の自殺」について、ある報告に触れたからである。
その報告によると、ベトナムに比べ、イラクやアフガニスタンからの米国帰還兵は、
自殺に走る傾向が強いという。そこには(ベトナムと比べ)明確な前線がなく、
軍服姿の敵もおらず、360度が戦場だからと分析している。
つまり、無辜の民を殺す確率は高くなる。
さらに、予想できるパターンも安心できる場所もない極限体験は、
兵士の神経を摩耗させ、帰還して後もなお、帰還兵の精神を蝕んでいくという。
兵士は比較的若い世代であるが故に、その「余生」を、その「重荷」を背負い
生きていくのだが、その重さに耐えきれず、死を選ぶ帰還兵が絶えないという。
「戦場体験」が人間に及ぼす計り知れない影響を想像し、残念ながら、頷く。
この話をある人にしたら、「日本でも、すでに起こっている」と、返ってきた。
「NHKでやってたよ。その数、24人」と。「別の調査では、89人だった」とも。
これまでの「後方支援」にして、この数字である。
銃弾に倒れることだけが「戦争で死ぬ」ことではない証左がここにある。
国会がこんな局面にある今だから、「戦争で死ぬ」ことについて真摯に考えたい。