「介護離職ゼロ」を、安倍首相は打ち出しました。
この手の勇ましい言葉を、信用しないことにしています。私は。
介護をめぐる「いま・ここ」を直視した時、
その言葉に「空しさ」さえ覚えるのは、私だけでしょうか。
介護……ある日、突然に降りかかり、
介護と仕事の両立に、展望が持てず、行き詰まる……。
総務省の「平成24年度就業構造基本調査」によると、
介護・看護のために離職した人は、年間約10万人います。
また、離職・転職を考えている人の中に、
介護中の人が、約40万人いるとのことです。
自身が介護の主な担い手になった場合、
従来の「働き方」を見直したり、両立を図ることは、容易ではありません。
実際、介護が必要な親がいる就労者のうち、
約3人に1人が、仕事を続けることに、不安を感じているとのことです。
こうした状況にもかかわらず、企業の多くが、
介護に直面している従業員の実態を把握していないとのことです。
一方、介護中の男性社員の場合は、
職場で上司に相談しない(できない?)傾向が強いといいます。
経営者側が現状を把握せず、従業員も職場で、そのことを隠したまま、
介護を続け、その結果、離職に至ると、双方にとって「痛手」となります。
「介護離職」した人は、介護を始めてから1年で5割近くが、
仕事との両立を断念しているといいます。
数年間続くことの多い介護のスタート時点で、両立が思うように図れず、
退職(=離職)する人が多いのだそうです。
現在、「要介護認定」を受けている人は、614万人(平成27年7月調べ)。
10年前に比べて、1.5倍に膨らんでいます。
今後、高齢化がますます進むことで、介護を受ける人も増え続けますし、
介護と仕事の両立のモンダイに直面する人も増え続けることになります。
安倍首相は「介護施設の整備や介護人材の育成をすすめ、介護の負担を軽減する」
と、語っています。
しかし、要介護者が施設利用や介護サービスを拒んだり、
親族の理解・協力が得られなくて、追い詰められるケースも多いのが現実です。
こうした現実に、その背景に、手を差し伸べない、
勇ましいかけ声だけの「介護離職ゼロ」に、ほだされてはなりません。